無題(空間)
空間
何も見えない闇の中、俺はこの世に正義と悪が存在するのだと思っていた。
いつまで、この中にいればいいのだろう。
どのくらい月日が経ったのだろう。


時間の流れさえも感じられないほど、暗くて何もない世界。
その中にただひとつ、俺という存在が浮かんでいる。
・・・俺は何なのだろう。


何故、こんな所にポツリと
存在しているのだろう。
いや、使命を忘れるな。
決して、忘れることは許されないのだから。
しかし、何もないような中だ。


過ぎていく時間がないはずなのに、確かに何かが過ぎていくのが分かる。
これは何なのだろう。
この何かとは何なのだろう。


この先はどうなっているのだろう。
ピシッ・・・、何かが割れる。
パリパリと音をたてて、空間が
剥がれ落ちる。
闇の向こうには光が満ちている。


何か懐かしい気がして、光のある方へと手を伸ばしてみる。
これが、優しさなのだろうか。


手を伸ばした先にあるのが、真実だといい。
ただ、強くそう願った。




エンペルは目が覚めた。
空には日が昇り、大きな木の陰になっているこの場所は、意外にも心地よい風だけが感じられる。



俺が、こんな真昼から昼寝・・・記憶にない。
ここは何処なのだろう。
ふっ、と使命を思い出す。
そして、辺りを見渡す。



ビルが並び、木があり、車が走る。
人もたくさんいる。
見た目通りじゃないか。
そう、ここは地球。
前にも何度か来たことはあったのだが・・・


やはり、いつ来ても
風景は変わらないものだ。
さて、これから使命を果たすための任務に移るところなのだが。
しかし、今回の使命は面倒くさい・・・


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