午前0時の図書館で
私、一年前に幽霊になった藤原紗和(ふじわら さわ)。
事故死だった。デートの帰り道、酔った運転手のトラックが対向車線を越えた。
私も運転していた彼氏も即死。
彼は成仏して、柔らかな光に包まれて、あの世へ召されていった。
私は――。
子供達と、この古めかしくも柔らかな空気に満たされた図書館で、自由気ままに過ごしている。
どうすれば成仏できるの?と、逝ってしまった恋人を想いながら。
私は待ち人の足音に耳を澄ませた。
待ち人は、この図書館の司書をしている青年で、毎週末の午前0時にやってくる。
自称幽霊研究家らしい。
山梔子の小道から現れた彼は、ポケットから鍵を取り出して図書館の扉を開く。
私達幽霊には鍵は必要ないけれど、彼には不可欠。
ガチャリと音をたてて入っていく彼を見つめて、私はそれを追った。