ミスティ
「嫌だから仕事あるし、今日は会うから無理だよ」

「たまにはいいでしょ」


金曜日の18時30分

表参道の駅に向かう途中で、そんな会話を毎週している気がする。

駅に向かう人々の波のなか、隣ではふんわりくるくるの髪の毛を揺らしながら薄い色のワンピースを着て、真っ白なヒールと今日もしっかりとメイクをしてぷるぷるの唇を尖らせながら、私にお誘いをかけてくる幼馴染がいる。

「最近冷たいじゃんかよ。飲み会に誘っても来てくれないしさ~」

ボスっ。

「いたっ」

そんな彼女の足元を見ながら同じ女性でも7cmが苦にならないのがずるいなと検討違いの考えをしていたら、思いっきり殴られた。

「話、聞いてないし・・・」

「ごめんごめん、そのヒールの凄さを考えてた」

「はぁ~なんかもう呆れた」

2ヶ月ぶりに彼に会うハズなのに私の格好というと・・・

毎日変わることのないスーツと7cmのお気に入りのヒール。
変わらずつけている香水と黒いバック。



ブーブー。ブーブーブー

「何、今日もダメなメール?」

カチャ。ピッ。ピ。

「そうみたい」

やっぱり、変化のない日常と変化のない彼との日常


< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop