ビターチョコレートに口づけを

せめてブーケだけはまもってみせようと、しっかりと胸に抱え込んで、後はもう流れに任せた。

「…っ…たい!」

先ずはお尻に衝撃が走って、それから上から降ってきた女性の重みで、全身に痛みがのし掛かる。


「ゆう!!??」


遠くで、雪の声が聞こえて、大丈夫と返そうとしたが、圧迫されて声が思うように出ない。

ああ、早く退いて欲しい。


「ゆう!!??
ちょっと待ってね!!」


――次に聞こえた声はやけに近くで、そして異常な程に、焦っていた。

でも、それは、世界中で誰よりも、私が安心できる、大好きな声だった。


「へへ、いっくん。」


痛いのに、安心したら何故か笑いが出てきて、女性の下で小さく笑った。

それから、いっくんの宣言通り、すぐに重みからは解放されて。

ごめんなさいと、繰り返す女性にいーえと笑いかけて、私も立ち上がろうとしたその時、いっくんに制止された。
何故だ。


「ゆう、歩いちゃだめだよ。」

「なんでよ?大丈夫だよ。
ほら、余裕余裕。」

「ばっ…だめだ!」


制止も聞かずに立ち上がろうとしたが、足に力が入らなくて、ぺたりとまた座ってしまった。

え?なんで?


「なんでも何も、足先を踏まれたんでしょ?ヒールで。
ほら、大人しく座って待ってね。」


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