ビターチョコレートに口づけを

再度、ブーケを差し出すが、ますます訝しげな顔をされる。

「……それは、ゆうが頑張って取ったものでしょ?」

「うん、だから。
だから、いっくんにあげる。」

「……ちょっと待って。色々待って。
どうしたの?あんなに欲しがってたじゃん。」

「うん。いっくんにあげたいから、ほしかったの。
ブーケをもらった人ってね、次に幸せになれるらしいの。
私ね、自分よりも、ずっとずっと、いっくんに幸せになって欲しいの。」


呆然とするいっくんの胸に、無理矢理ブーケを押し付けて、ニコッと笑いかける。


―――え?


そしたら、急に。
いっくんの瞳から、涙がこぼれ落ちた。

私も、動きが止まる。


「どうしたの!?
いやだった? やっぱブーケなんて恥ずかしい?」


慌ててそう聞くが、ふるふると首をふって否定された。

じゃあ、なんで、といいかけたとき、体が温かい何かに包まれた。

それがいっくんの体だって気づいたのはその数秒後。


「ちょおおおおお!!!
いっくん!?」


そう呼び掛けるが、返事はない。

代わりに耳元から、嗚咽のようなものが聞こえて、私も口を閉じた。


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