ビターチョコレートに口づけを

それから。

兄ちゃんに言われた通り、革靴を無理やり履くのはやめた。
代わりに楽だからと持っていたクロックスを履いて、玄関でいっくんの迎えを待つことにした。


「……おい。既に何分そこにいんだよ、お前。
こえーよ。」

「あ、兄ちゃん。」

「迎え何時なんだよ?」

「あと30分後?」

「さっさとそれ脱いで部屋入れボケ!!!!」


兄ちゃんに一喝されて、渋々靴を脱ぐ。
そして、リビングへとゆっくりと歩く。


「確かにな、何でこんな早くにあそこにいるか、さっき突っ込まなかった俺も悪かった。
けどな、どう考えても一旦履いたらリビングに戻ると思ったんだよ。
それがだ。
何なんだよ、無駄に早起きして、無駄に早く玄関で待っとくとかもう、正直引くわ。」


そう言って自分の額の辺りを押さえてる兄の話をぶっちゃっけよく聞いていない。
相づちだけはちゃんと打っといた。

親指が使えないって、案外、神経を使う歩き方になるのだ。

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