ビターチョコレートに口づけを

確かにさ。
いっくんは雪と兄ちゃんと同い年だからさ、七歳年が離れてるさ。
そりゃ、子供だわ。

でもさ、流石にここまで子供扱いされるなんて酷すぎる。


「ああ、もう!」


小さく呟いて、骨折したのも忘れて、ずんずんと歩いて行き、車に乗ろうとした時。

ちょっとだけ戸惑った。

後ろに乗るべきか、助手席に乗るべきか。

雪とはもう別れたけれど、ここは、雪の特等席だった場所。
別に、私がそれを嫌だとかじゃない。

むしろ逆で、いっくんが嫌なんじゃないかな、とか。
もう既に別の彼女がいたらどうしよう、とか。

一瞬考えて、結局。後ろの扉を触った時。

私の後ろをついて来ていたいっくんが、すっと、私の横に立って。

それから、助手席の扉を開いた。


「隣、座ってくれないの?」


コンコン、と扉を叩きながら、困ったようにそう言って、躊躇う私を促すように笑った。


「で、でも、彼女とかは?」

「はは、知ってるでしょ?
先日別れて、それっきり。」


そう笑うけれど、それはまだ痛々しくて、私には直視できなかった。


「でも……本当に、いいの?」

「いーの。独り身なんだから気を使う相手もいないでしょ?
大体、二人しか乗らないのに………ゆうと、前後で話すってなんか寂しいじゃんか。」


そう爽やかに笑ったいっくんは、やっぱりどうしようもないくらいかっこよくて、私は気付いたら、うん、と頷いていた。

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