ビターチョコレートに口づけを
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「おっはよーう!」
片方の足を引きずりながらも何とか教室にたどり着き、大きな声で挨拶をした。
「おはよー。」
「おっはー。」
などと次々と返ってくるのは、女の子の声ばかり。それに、にっこりと笑って、窓際に近い、自分の席に着いた。
私の学校は、共学なのだけれど、女子が過半数以上を占めていて、学校は女子が引っ張っていってると言っても過言ではない。
そのせいか、しっかり者で、男の子のようにサバサバとした女の子ばかりで、女子特有の陰湿さみたいなものが全くと言って良いほどない。
女子クラスと呼ばれる、女の子だけで構成されたこのクラスにだって、それは言えることで。
和気あいあいとしていて、それこそいじめなんてみたことがないくらい、皆仲がよい。
クラス全員で挨拶を交わすなんて、それこそ小学校ですらしたことがなかった私は、本当にこのクラスの居心地がよい。
「おはよう、ゆうゆう」
急に振り向いた、前の席の詩乃ちゃんに驚きながらも、おはよう、と返す。
詩乃ちゃんの顔はにやにやと緩みきっている。
少々怖い。
「もう、ゆうゆうったら本当に可愛い。食べちゃいたい。」
そう言って、机から身を乗り出して来た詩乃ちゃんは、有無を言わさず私を抱き締めた。
うわっと声をあげると、より一層強く抱き締められた。詩乃ちゃん、痛いです。
「詩乃ちゃん。」
「なに?ゆうゆう?
ついに私と付き合う気になった?」
「違うよ!
香水、変えた?」
抱き締められた瞬間に、香った匂いがいつもと違う気がして、すんすんと、首の辺りの匂いを嗅いだ。
おかしい。
こんな甘い匂いじゃなくて、もっと優しい匂いだったのに。
「ちょ、くすぐったいって!
そだよー!香水買えちゃいました。」