ビターチョコレートに口づけを
えへへ、と笑った詩乃ちゃんに、そっかぁ、と返した。


「何?変かなぁ?」



すんすんと、自分で匂いをかぎだした詩乃ちゃんに慌てて首を振った。


「全然!!!
女の子らしくてすごく可愛いと思うよ!
でも、私は前の方が好きだなぁと思って。」

「え、ほんと?
そっかぁ…うーん。
私もあんまりなんだよねぇ。彼氏が好きって言ったからこれにしたんだけど……
うん!決めた!!
前のに戻すことにするー。
前のが、私らしいよね、うん!」



そう言って、ぎゅぎゅーと更に力を込めた詩乃ちゃんに、うん、と笑って返す。


「良かったー、詩乃ちゃんの前の香水好きー。優しい匂いがするもん。」


「そうかなー?
ありがとうー!もー、ゆうゆう大好きー!」



なでなでと頭を撫でられて、思わずでれーとだらしなく笑ってしまう。
兄ちゃんとか、いっくんにされまくるから、多分これは反射だ。


「ゆうゆうはー?」


そう言って、私よりいくつか背が高い詩乃ちゃんは、私の首もとに顔を寄せて、すんすんと匂いをかぎだした。


「ちょ、くすぐったいって。」


けらけらと笑いながら、彼女のチェックが終わるのを待っていると、彼女は、急に体を離れた。

ビックリしながら詩乃ちゃんを覗くと、いやに真面目な顔で、


「香水、変えた?」


と聞かれた。
なんだろう、と思いながら、当然のように首を振る。
そもそも香水なんてつけてないから。

すると、思いっきり顔を歪めた詩乃ちゃんは。


「ゆうゆうが………わたしのゆうゆうが汚されたぁ!!!!」


絶叫した。
えええ!!!!と私の方が驚いて、思わず目を丸くする。


「ななななななななんてことをいってるの!!??」


慌てて尋ねるが、動揺のあまり噛みまくった。

私達の周りにはわらわらと人が集まりだして、その顔は、にやにやと笑っているか、詩乃ちゃんみたいに顔が怖いか、戸惑ったように笑うかのどれかだった。

まぁ、圧倒的に前者が多いのだけれど。
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