悪くないかも。
悪くないかも。
「ごめん、遅れちゃった」

声をかけながら、半個室の居酒屋で唯一空いている席に慌ただしく腰かける。目の前に座った彼の優しげな笑顔に私も曖昧な笑顔を返し、久しぶりの合コンに少し緊張している自分に気づく。

「もう、遅いよ~。仕事?」

「うん、まあ……。ほんとごめん」

この飲み会の主催者である大学時代の友人はいつも以上に可愛くて、気合の入り具合に思わず苦笑してしまう。

「あれ、携帯。光ってるよ」

隣に座っている真面目そうな彼が口の開いた私の鞄の中で光る携帯を指差した。

「あ、電話かな……ちょっと出てくる」

慌ただしいよ、と非難を浴びつつ、入ったばかりの部屋を出ていく。後ろ手にドアを閉めながら、既にお酒が入ってほんわかと盛り上がる部屋を冷静に眺めていた。
< 1 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop