声の魔法
話し終えて受話器を置いた青年に、惹き寄せられるように近づく。

なんていう名前だろう。
年は?
彼女はいるだろうか。

私は胸を弾ませた。
気づいた青年が営業スマイルを顔に張りつける。

「予約の電話がかかってきて……」

彼は爽やかに私の名を聞いた。

私が知りたいのは、あなたの名前なのに。

「少々お待ちください」

彼が奥の書庫へ向かう。
私は胸を高まらせて、それを待つ。

やはり、私はこの人を好きになる。
頭の中から、彼氏の存在が消えた瞬間だった。

―おわり―
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