あの夏の永遠~二度と会えない君へ~
江梨にしても、ユウへの愛が減った事などなかった。

初めて本当に愛して愛される相手ヒロにめぐりあい、幸せに飢えていたぶん距離が悲しくて、ヒロに会いに行く時はユウに淋しい思いをさせ、ヒロがくるとそれはそれで、ユウとヒロはひとまわりしか年齢が違わないので、仲良くゲームに興じたり勉強も教えて貰っていたが、夜になると仕切りの戸をしめてしまう事がユウを淋しさの地獄に突き落としていた。

その為に将来のかかった大事な話し合いが、ヒロとじゅうぶんにできなくて、破局に繋がったのも事実だ。

ユウは小さい頃は自分が江梨に愛されている自信を強く持っていたが、だんだんと自分は愛されていないと悩むようになった。

江梨と親にも言える事だが、愛していても伝わっていなかったら意味がない。

ユウは江梨にとって、ずっと大切な命であり愛する息子だ。

それだけに、江梨が自殺を図った時ユウが寝言で、

「どうして……うぅ……

どうして?……死なないで……
母さんが死んだら僕は一人ぼっちになるじゃない……うぅ……」

と、言いながら泣いているのを見た時は、江梨は眠っているユウの涙を拭いてやり、

『そうだね……。ごめん、ユウ。

母さんユウをひとりぼっちにするとこだったね。

ごめんね。母さんが間違っていた。

二度とユウをひとりぼっちになる事なんてしない!

ごめんね……!ごめんね……!』

と、泣きじゃくった。

今でも思い出す度涙が出る。



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