あの夏の永遠~二度と会えない君へ~
まさかの12年ぶりで流産する事も無く、しかもこんなに深く愛しあった人との子供に恵まれたのだ。

泣きながら言った。

『堕ろせって言わないの?』

「堕ろせなんてたとえ言ったって、こんなに俺の事愛してくれてる江梨ちゃんが、俺の子供堕ろすはずないじゃない」

『まだ卒業まで長いのに、堕ろせって言って。

堕ろす代わりに卒業したら必ず結婚するとか約束してくれるなら、私も耐えれて堕ろせるかも知れないから』

「結婚しよう」

『駄目、駄目よ。私も人の親だからわかるの。

今日まで親がどんなに苦労して、大学に行かせたか。

しかも特進で、しかも国立大学の法学部に息子が入って、それなのにやめるなんて言わないで。

……私、待つから、ヒロちゃんが卒業するまで父親の名前を言わないで、一人で生んで卒業を待つから』
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