あの夏の永遠~二度と会えない君へ~
正直妊娠中に、ヒロの為に生んではいけないんではないかと思った事が何度もあった。

それで赤ちゃんだけを殺すなんてできないし、生きている限りヒロの事を忘れるのは無理だし、それなら一緒に死んでヒロの前から消えようと狭いトイレに入り、2種類の洗剤を一瓶ずついれて混ぜ、有毒ガスを充満させて死のうとしかけた事があった。

しかし、苦しくなった頃、

『やっぱり、私は殺せても赤ちゃんは殺せない!』

と、飛び出してしまった。

泣きながら線路の上を歩いた事もあった。

(これらは全て、ヒロの事を思ってした事であるが、ヒロの身内はこれらをヒロへの脅迫行為だと後になじった)

でも江梨はその子が産まれて抱くと、初めは何ヶ月も隠し続けたり、その子の事でヒロと喧嘩した事もあってなかなか実感がなかったが、もう隠さないでいいんだと思うと何倍ものそれまでの分の愛しさが江梨にこみあげた。

強い母性が江梨に芽生えたのだ。

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