藍白の鬼


「こうも暴れるたぁ、まるで釣り上げた魚みたいじゃの」


どうやらあたしを捕まえているのは男のようだ。


ソイツが暢気にそう言って、漫画で見たようにドSヤローがくくくと笑うように、笑う。


何なのコイツ。


しかもあたしはコイツの脇腹あたりにくくられているから、男の顔が見えない。


塚、放せ、よッ!


あたしは思いきり男の足を蹴って、ヤツがふらついたスキにだっと逃げる。


いやぁ、空気はおいしいな!


口塞がれてたから結構つらかった。


あたしは鼻からすって口で吐く、所謂、深呼吸とかいうヤツをする。


そしてふと、男を見てみると、彼はなんと地面にべたりと伏せていた。


全くといってもいいほど動かない。


胸のあたりも上下しない。


「……え…」


え、これってあたしが殺したってことなのか!!?


え、いや、あたし男の足蹴っただけだし。


え、人間ってもしかしてそれだけで死んじゃったりする!!?


え、嘘、そんな話聞いたことないよ。


ちょ、マスコミーっ!!!


これ記事にしたらいろんな人食いついてくるって。


そしたら、タレこみをしたあたしはたくさん金貰って大金持ちーっ!


やったね!


じゃなくて。


そんな妄想なんかどうでもいいから。


ど、どうしようか…。


このヒト死んじゃったら……。


あぁぁああ、あたしが殺人鬼とかイヤだー!!!

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