藍白の鬼
「ちょ、ちょっと!!!なに寝てんのよっ。起きなさいよっ」
男の背中をバシバシ叩いて起こしてみる。
すると、祈りが通じたのか、男は何事もなかったようにむくっと、上半身を起こしてあたしを見る。
「変わってないの、蓮華」
うわ、かっこいい。
白い長い髪に、30代か40代くらいのかっこいい顔つき。
なんていうんだっけ、ダンディ?
あ、ひげは生えてないけど。
服は藍色の着物で胸元がはだけてて、鍛え上げられたとみえる胸筋がチラリと見えた。
うわ、マジでかっこいい。
「蓮華?」
男はあたしの名を呼んで、不思議そうな顔をする。
それもそうか。
ずっと男の顔見てるんだもんな。
……ってちょっと待て。
何故こいつはあたしの名前知ってんだ。
あたしはコイツに名乗った覚えはないぞ。
あたしは少し男と距離をとった。
なんとなく。
男はそれに気づいたのか、ニヤリと笑って言う。
「そんなに警戒せんでもええ」
いや、全力で警戒しますよ。
「さて、蓮華。儂のことは覚えておるな?」
男はあたしにそう言い、握れというように手を差し出す。
……いや、覚えてないんですけど。
てか、今さっき会ったばっかですよね?
なんてあたしの心の叫びは聞いてくれないようで。
「迎えに来た」
男はそう言ってキョトンとしているあたしの手を引いて、あたしの唇と自分の唇をふれさせた。