藍白の鬼


「ちょ、ちょっと!!!なに寝てんのよっ。起きなさいよっ」


男の背中をバシバシ叩いて起こしてみる。


すると、祈りが通じたのか、男は何事もなかったようにむくっと、上半身を起こしてあたしを見る。


「変わってないの、蓮華」


うわ、かっこいい。


白い長い髪に、30代か40代くらいのかっこいい顔つき。


なんていうんだっけ、ダンディ?


あ、ひげは生えてないけど。


服は藍色の着物で胸元がはだけてて、鍛え上げられたとみえる胸筋がチラリと見えた。


うわ、マジでかっこいい。


「蓮華?」


男はあたしの名を呼んで、不思議そうな顔をする。


それもそうか。


ずっと男の顔見てるんだもんな。


……ってちょっと待て。


何故こいつはあたしの名前知ってんだ。


あたしはコイツに名乗った覚えはないぞ。


あたしは少し男と距離をとった。


なんとなく。


男はそれに気づいたのか、ニヤリと笑って言う。


「そんなに警戒せんでもええ」


いや、全力で警戒しますよ。


「さて、蓮華。儂のことは覚えておるな?」


男はあたしにそう言い、握れというように手を差し出す。


……いや、覚えてないんですけど。


てか、今さっき会ったばっかですよね?


なんてあたしの心の叫びは聞いてくれないようで。


「迎えに来た」


男はそう言ってキョトンとしているあたしの手を引いて、あたしの唇と自分の唇をふれさせた。

< 14 / 50 >

この作品をシェア

pagetop