藍白の鬼
とある部屋に入ると、女の人が女中を二人ほど連れて入ってきた。
目が細くて肌も白く、狐みたいな人だった。
「この子かい」
「あぁ」
京次に確認し、あたしにズイッと近づいてジロジロと観察する。
「……意外だねえ…」
気が済んだのか、彼女はポツリと呟いて京次を見る。
「そうかの?」
「そうよ。京次が連れてきた女だから、もう少し綺麗な方だと思ったけど」
「あ?」
そうでもないねえ…と、不思議そうに首を傾げながら再びあたしを見る。
「ふむ…あんた、ほんとにヨシノレンゲなのかい?」
「あ゛?」
思わず殺意を抱いてしまう。
「………………。あ、京次」
彼女はあたしを見たまま、彼の名を呼ぶ。
「何じゃ」
「あんた、もしかして同姓同名の子連れてきたんじゃないの」
何 を 言 っ て る ん だ Y O !
「む。やはりそう思うか」
お前も思ってたんかい!
「当たり前だろう。目付き悪いし」
「一重のことバカにしてんのか」
悪気はないのは分かる。
分かるけど、そう言わずにはいられなかった。
「儂も、ちいと別嬪かとは思うとったんじゃがのう。印がある以上何とも言えん」
京次はそう言って、あたしの左手首にある小さな薺の花のようなアザを彼女に見せる。
「アラ、ほんと。間違いないね。一体どうしたモンかねえ」
これがなんの印なのかは知らないが、これを見た彼女は仕方がなく、あたしを吉野蓮華だと認めたようだった。
「おまけに胸も小さいしの。揉める乳すらないのは淋しいのう」
二人は、一体何があったんだ、とでも言いたげな目をしてあたしを見る。
悪気がないのは承知だ。
だけど一番それが傷つくんだよ。
「お前らいい加減にしろよ」
イラつくあたしを見て、二人の女中が笑いを堪えていた。