藍白の鬼
その後、あたしは葉月に自分の部屋とか京次の部屋とか、縁側とか…色んな場所を教えてもらった。
だけど案の定、すぐに覚えれる情報じゃなかった。
葉月は晩ごはんの支度があるとかなんとかで、調理場に行ってしまった。
あたしも手伝おうとしたが、あんた今日いろいろあったんだから休んどきなさいよ、と断られてしまった。
10畳という少し広い自分の部屋には、箪笥に入っている布団しかなく、どこからどう見ても殺風景だった。
こんな何もない部屋で籠ってるのも暇だ。
そこであたしは、さっき教えてもらった縁側に行くことにした。
なんだかんだ言って、太陽は西に傾き始めていた。
歩いていると前方から、京次と誰かは分からないが、彼にべったりとくっついている顔が整っている女が此方に向かってきている。
なんとなく、ムカついた。
『道具だよ、京次の』
そして先ぼどいった葉月の言葉が脳内に響く。
「女タラシ」
あたしと京次がすれ違う時、言うつもりはなかったのだが、あたしの口からそんな言葉が漏れていた。
ハッとして立ち止まると、何事もなかったのように去っていく京次が、鼻で笑った。