藍白の鬼


「…………………」


皆でご飯を食べている時、目の前にいる京次があたしが味を付けた煮物を食べ、不意に眉を顰めた。


だが彼は何も言わず、何事もなかったかのようにそのまま食事を続けた。


嫌な予感がする。


あたしはそんな京次を見て、なんとなくそう思った。


「お口に合わなかったらしいね。全く、鋭い」


食器を下げ、洗っている時に葉月が言った。


「……え」


ということは、マズイってこと?


「別段、マズイってわけじゃねえよ。…初めてにしては美味い方だと思う」


あたしより二つ下の和(カズ)が、フォローする。


彼は料理が上手で、妾の子らしい。


料理のことならテキパキ動くのに、料理のことじゃなくなると途端にボケッとしだす、いわゆる料理バカらしい。


あたしは彼のことは何とも思ってはいないが、彼はどうやらあたしを気に入っているらしい。


直接聞いたわけじゃないし、あたしの単なる憶測にすぎないけど。


ただ、なんとなくそんな気がする。


—―と、不意に和と目が合う。


「…………………」


ただ、なんとなく。
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