藍白の鬼
湯につかって、大きく息を吸う。
肺が軋むほど。
「あー……」
一気に吐き出すと、厭なことが全部体から出て行くような気がした。
「…………………」
少しぼんやりしていたが、この前のことを思い出し、辺りに変態鬼がいないかどうか確認して、再びあたしは肩まで湯につかる。
『あれ、気づいてなかったの?』
縁側で和が言った言葉が反芻する。
『欲しいんだけど、蓮華が』
「……………………」
思い出して顔が熱を持つ。
あんなこと言われたのは初め、て……じゃなかった。
そういや京次にも似たようなこと言われたんだった。
けどなんでだろ。
京次に言われてもなんとも思わない、寧ろ嫌悪感が半端ないのに、和に言われたら妙に心拍数が上がる。
……病気、だろうか。
いやいや、所謂これが恋とか言うやつなのだろうか。
「……………………」
ふと、体を洗う手を止め、鏡を見る。
不細工でもない(私的に)が、美人でもない(公認)あたしが目の前に立っている。
女だということが一目見て分かるのは、長めの髪と大きなおしりがあるからだ。
胸のふくらみは人並みにない。
「……………………」
夢でも見ているのだろうか。
なんで、あたしなんだろう。
不思議でたまらなくなった。