藍白の鬼
「なんってねー!びっくりし――」
バッと顔を上げると、何も読み取れない京次の無表情があって。
だから、次に何を言われるのか、全然わかんなくて。
それが怖くて。
だからあんな風にふざけたのに、京次はそんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、無表情のまま、あたしの唇を奪った。
前ほど強引じゃなくて、やさしかった。
「はよ休め」
京次は唇を離しそう言う。
前と違ってかなり短かったから唖然としていると、もっとしてほしかったのか、なんて言うから一発お見舞いしてやろうかと思ったけどやめておいた。
なんとなく、そんな気分じゃなかった。
「寝たら少しは楽になろう。儂はここにおる」
京次は再びあたしを抱き寄せて同じことを言い、自分の腕に頭を置くよう促す。
「……うん…」
あたしはそのまま彼の言う通りにし、目を閉じる。
京次の息遣いが聞こえる。
手を伸ばすと、彼の体温を感じる。
なんとなく、今は京次と離れたくなかった。