藍白の鬼


「…和は?」


次の日、起きて、いつも通り調理場に行くと和がいなかった。


「あぁ、おはよう、蓮華。起きてたのかい」


葉月があたしを映す。


「今日は足りてるからね、大丈夫だよ。京次ンとこ行っといで。……聞きたいことあるんだろう?」


彼女はあたしが聞きたいことを知っているようで…っていっても、ここじゃみんな知ってることなのかもしれないけれど。


そしてあたしは葉月に言われた通り、京次のところに行くことにした。


彼は縁側にもいなくて、部屋にもいなくて、あまりいい記憶のない小屋にもいなかった。


ちなみにこれは余談だが、真っ先に風呂を調べたところ、おばあさんが風呂掃除をしていた。


……ダヨネー、そんな時間帯ダヨネー。


思いつく当てがなくなったあたしは、京次探しはやめて、探検をすることにした。


縁側に庭用と思しき下駄があったので、それをはいて外へ歩く。


心地よい風が吹いている。


そういえば、もう四月を過ぎているんだったっけ。


……入社式、どうだったんだろう。


窮屈なスーツに身を包んでいる自分を想像してみると、少し気持ち悪くて笑える。


この家の外観は、あたしとは対照的にものすごく立派だった。


咲いている綺麗な花が、あたしを嘲笑っているようで嫌な気がした。


――やめて


小さな虫にたかっている蟻が言っているような気がした。


流れに身を任せ続けた今の自分のなれの果てなのだと。


――やめて!


たかられている虫がお前だと。


「蓮華?」


京次に呼ばれ、はっと顔を上げると、心配そうな京次の顔があった。


風がさっきより強く吹いているような気がした。
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