藍白の鬼
びしょびしょになった背の高い男の人が淋さんを呼ぶ。
「こいつは楓太」
「ちょ、淋…」
淋さんの隣にきた長身の男の人が、慌てたように目を見開く。
「構わん」
淋さんが心配そうに言う楓太さんを、宥めるように言った。
彼はどっちかっていうと細身で、鼻が高く、蒼い眼に銀と黒よりの灰色が混じったような髪を持ち、長身だ。
あたしはどこかの国の人とみた。
「これは蓮華」
京次があたしを紹介する。
ってか、『これは』って…あたしものじゃないんだけど。
そう思いながら口にはせず、ギロリと京次を睨みつける。
「…蓮華?」
淋さんは面食らった顔をして、瞬きをしてあたしを見る。
え、何?
そう思ったのはあたしだけではなくて、楓太さんもそう思ったらしく、キョトンとしている。
「随分寵愛しているんだな、嫁か?」
心底驚いたように淋さんが言い、あたしは聞きなれない言葉に困惑する。
……ちょうあい…?
「文句あるかの?」
気のせいか、京次は低い声だった。
なんていうか、怒ってる?
…なんで?
「お前こそ淋はどうだ?」
話が理解できていないあたしを置いて、京次は楓太さんに話をふる。
「え、俺?」
急にふられてキョトンとする楓太さんに、三人の視線が集まる。
……とくに淋さんの視線が痛そうだ。
「さぞかし手を焼いているだろうな」
京次の言葉で質問の意味を理解したのか、彼はふざけたように言い、HAHAHAと豪快に笑う。
「いやーそりゃぁもう」
「ところで淋とはどういう関係じゃ?」
「奥深い関係ですねー」
-----ドスッ
「ぐっ」
彼が言った瞬間、楓太さんの腹に淋さんの肘鉄砲が直撃する。
「お前も人のこと言えまい?」
嘲るように言う京次に、淋さんがギロリと睨んだ。