藍白の鬼
淋さんは京次と話があるとかで、あたしと楓太さんは客間に残された。
知り合って間もない人と二人っきりにさせた京次を、あたしはたぶん恨む。
だってこういう気まずい雰囲気は大嫌いなんだもん。
学校生活も、施設にいるときも、ほとんど一人で過ごしてきたあたしにとっては、今この瞬間がとてつもなく嫌だ。
まず、何を話せばいいのか分からないし、話しても相手は外国の人だし、ここの国のことあんまり知らないかもだし…。
「君は人間なの?」
「へ!!?」
楓太さんが急にあたしに話しかける。
うわ、ほんとびっくりした…。
「へー。鬼が人間を好きになったりするのって、ほんとにあるんだ」
驚きすぎて首をコクコクと縦に振ることしかできなかったが、彼はお構いなしに話し続ける。
「!!?」
驚きすぎてフリーズしたあたしを見て彼は、訝しそうな顔をしてあたしをじっと見る。
「……違うの?」
蒼い目の中にあたしが映る。
「それは、ない…と思う」
だってあたし京次からそんな言葉とか聞いたことないし。
ああいうのって絶対あたしをからかってるだけだし。
「どうして?」
彼はきょとんとしたままあたしを見て、首をかしげる。
「あたしを……違う。昔、あたしが京次を助けたことがあって、……で、たぶん、その恩返しっていうか、借り?を返さなきゃいけないだけで、あたしのことそんな風に見てるわけない…」
言い終わったあたしがふと顔を上げると、目の前には楓太さんの顔がものすごく近くにあった。
「気のせいかな、俺には君が京次さんを好いているようにしか聞こえないよ」
「…え?」
「一緒なんじゃ――」
大きく襖が開けられる音がして、彼の言葉が遮られる。
襖を開けた京次の顔に、一瞬、力が入った。
「帰るぞ、楓太」
京次の後ろにいる淋さんが、この部屋には入らずに言う。
「はいはい」
彼はそう言いあたしの頬っぺたにキスをして、去っていく。
……なんだ、あの人?
外国人だからフツーなのかもしれないが、よくわからない人だった。