藍白の鬼
二人が去って、京次とこの部屋で二人きりになって、妙に空気がピリピリし始める。
「……………………」
っていうか、京次がずっとあたしをじっと見てる。
…これは、なんなんだ?
「京じ—―」
不意に彼があたしを抱き寄せ、まるで脆い置物を扱うかのように優しく、だけど強く、抱きししめる。
「って、ちょ!!?」
「黙れ」
急のことでテンパるあたしに、京次は低く唸った。
いつになく、怒っているような気がした。
「儂だけを見ろ。儂だけを感じろ。儂だけを欲しろ」
「……どう…した、んだよ…」
あたし包みこむ腕に更に力が入った。
「…京次?」
わけが分からない。
ほんと、どうしたんだ、こいつ。
京次は混乱しているあたしを余所に、いつの間にかあたしを押し倒していた。
真上にある綺麗な顔は悲しそうな表情を浮かべていて、見ているこっちまで沈んな気分になる。
近づいてくる彼の顔で所為で、あたしの鼓動は早くなる。
京次の息が首筋にかかってくすぐったい。
のも束の間。
「い゛っ!!?」
とてつもない激痛があたしの首筋を襲い、液体が流れていくのを感じた。
それを手で触ると思った通り血だった。
「全くお前らは…儚く脆いのう……」
何すんだよ!!って言いたかったけど、寂しそうにそう言う京次の所為で、その言葉は喉に突っかかったまま出てこなかった。
彼の目には悲しそうな顔をしているあたしが映っていた。