カレの事情とカノジョの理想
記憶から削除しようと思ったけど、どうしても忘れられない。
蓮沼康人の人懐っこい笑みが、優しいキスが頭から離れない。
無理やりなんて、嫌だったはずなのに。
意思とは関係なく、心の中に湧いてくるこの感覚は何……?
「カフェラテお待たせー」
……はっ! なに思いだしてるのよっ。だから忘れるんだってば!
って、この声――!?
「あ……っ!」
「昨日はドーモ」
振り返るとそこには……記憶から削除しようとしていた男が、私の頼んだカフェラテを乗せたトレイを持って立っていた。
まるでウェイターみたいな仕草に唖然としていると、バツが悪そうに片目を瞑って手を合わせているミカと目があった。
え? これってどういうこと!?