カレの事情とカノジョの理想
「オレが頼んだんだ。美春チャンのアドレスも何も知らないからさ」
私の心を見透かしたように、ニヤっと笑った――蓮沼康人は、勝手に空いてるイスに腰掛けた。
「そんな嫌がらなくてもさぁ」
「……あんなこと、しておいて?」
「んー? だって美春チャン、可愛かったし」
……こんな事、臆面もなく言えるなんて、絶対この人女慣れしてる……
そう思いながら、まんまと頬が熱くなってる自分がすごく嫌だ。
助けを求めるようにミカを見ると、なんだか楽しそうにクスクスと笑ってる。
もうっ。面白がって!
「つか美春チャンさぁ……オレと付き合ってみない?」
「…………は?」
いきなり何言ってるのこの人……
思わず面食らって蓮沼康人の顔を凝視すると、「嫌?」と言って、私の顔を覗き込んだ。
その表情は妙に色っぽい反面、まるで新しい玩具に喜ぶ子供みたいな無邪気さだ。
この人、私で遊ぶつもりなんだ。
遊ばれるなんて冗談じゃないんだから。