カレの事情とカノジョの理想
えっと、確か……
「オレ、蓮沼康人(はすぬまやすと)。ヤスって呼んで」
「あ、私は……」
「吉田美春(よしだみはる)チャンでしょ? 一応自己紹介したのに、オレ印象薄かった?」
かなりショックーなんて軽く言いながら、蓮沼くんは苦笑した。
「つか美春チャン、最初っから、上の空だったデショ?」
「え……っ」
やる気ないのバレバレだった?
蓮沼くんはニッと笑うと、自然な仕種で身体を寄せて耳打ちしてきた。
「……二人で抜け出そーか」
「え?」
「こういう集まり、美春チャン苦手そーだし」
「でも……」
「ダイジョーブ。他は他で、勝手にやるよ」
チラッと他のメンバーに目を向けると、蓮沼くんは立ち上がってさっさと荷物を纏め始めた。
「オレ先出てるから、何分かしたら来て」
「ちょっと待っ……」
引きとめる間もなく、蓮沼くんは席を立ってしまった。
いきなり過ぎて訳が分からない。
どうすればいいの――!?