カレの事情とカノジョの理想
「私はそういう冗談はキラ……っ!?」
掴まれた手首を引っ張られて、路地裏に引き込まれる。それと同時に、蓮沼くんに抱き寄せられていた。
一瞬の出来事に、抵抗する間もなかった。
「ちょっと、離してってば……!」
「つか美春チャンさ、男慣れしてないね」
人懐っこい瞳が、私を映す。目を背けると、微かに香水の匂いとお酒の匂いが鼻につくいた。
これだから男の人は――!
「っ、ほっといて下さいっ」
「そーいうの、何気にソソるんだけど」
私の手首を軽々と頭上で纏めあげた蓮沼くんは、そのまま身体を壁に押しつけてきた。
そしてもう片方の手で顎を掴んで、上向けさせられる。
「やめてってば……!」
男の人とこんなに接近したことなんてないから、上手いかわし方なんてわからない。
頭の中がパニックになって、それでも必死になって離れようとしたけど、蓮沼くんの身体はビクともしなかった