最愛
目が覚めると隣に夏樹が寝ていて。
右手はしっかりと私の左手を握っていた。
「夏樹・・・・・」
私は思わず夏樹の唇に自分の唇を重ね合わせていた。
少し開いた窓から入ってくる風が、私に冷静になれと告げているような気がした。
「ゴメンね・・・・・・」
あふれてくる涙をぬぐい、服を着る。
夏樹の目が覚めたら、何事もなかったかのように振る舞う。
そう自分に言い聞かせた。
寝室をあとにしようとしたとき、夏樹が何か言った。
「夏樹?」
夏樹は眠ったままだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・りり・・・・」
夏樹の口からこぼれたのは、私の名前ではなかった。