最愛
「どうするの?産むの?堕ろすの?」
堕ろす。
そんなこと考えてもなかった。
私が考えていたのは、どうやって育てるか、とか、実家に帰るか、とかそういうことだった。
「まぁどうせゆりのことだから、堕ろすなんて選択肢にないんでしょ?」
私のことはお見通しってか?
「産みたいよ、でも・・・・・」
「迷ってるんだ?」
藍の言葉に頷く。
「この子は、父親のいない子になっちゃう」
「夏樹くんには、言わないつもりなの?」
「・・・・言えるわけ、ないじゃん」
私の目から涙がこぼれる。