最愛
「っぶねーなぁ」
「夏樹・・・」
私は後ろから体を支えられた。
「なんでいるのよ」
「大学でお前探してたら藍ちゃんが教えてくれたんだよ。夏バテで体調悪いから病院行ったって」
夏バテ、じゃなかったけどね。
「そうじゃなくて、何しに来たの?っていう意味」
「何って、迎えにきたんだろ。あんま1人で出歩くなよ。具合悪いなら尚更」
夏樹が心配してるのは、私の耳。
私は左耳がほとんど聞こえない。
高校生の時に起きた事故が原因なんだろうけど、外部の損傷はなく、理由はよくわからない。
「帰るぞ」
夏樹が歩き出す。
「夏樹・・・」
「ん?」
「だっこして」
「自分で歩け」
夏樹は多分ツンデレ。
普段はクールだし口悪いけど、時々優しい。
今日だって、迎えに来てくれた。