最愛


本当は、大学で私たちは離れるはずだった。

もともと付き合ってたわけじゃないし、いくら腐れ縁だからといっても、当然の流れだった。

でも、それが大きく狂ってしまったのが、あの事故だった。

あれは高校3年生のクリスマス。

私は夏樹に告白したんだ。

ずっと言えなかった気持ちを伝えた。

でも、夏樹は口を閉ざしたままだった。

絶えきれなくなった私は、泣きながら逃げ出した。

夏樹が私の手をつかんだのを振り払って、車道側に飛び出してしまったんだ。

幸い大事には至らなかったけれど、私の世界から音が半分消えた。

そして私は、夏樹の心に深い傷を残してしまった。

夏樹は、悪かった、なんでもするから、と病院のベッドで私の頭を優しく撫でてくれた。

そのとき私は思わず言ってしまった。

「ずっとそばにいて」

と。

それが何を意味するかも考えずに。

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