華やかな香り(3p)
出会い
ボクが初めてあの人に会ったのは、よく晴れた日曜のことだった。

ボクは部活で学校に出かけるところで、家の近くのバス停で、遅れているバスを待っていた。

ふと、華やかな香りがボクの鼻腔をくすぐった。
振り向くと、あの人がそこに立っていた。

人の気配を全く感じなかったボクは、突然のことにきっと、ひどい顔をしていたんだろう。

「おはよ。驚かした?」

それがあの人の最初の言葉だった。

ボクはなぜかちょっと口惜しくて、つっけんどんに 「おはようございます」 とだけ言って、向きを変えた。
それでも、あの人はしつこく絡みついてきた。

「部活なの?」

あ、はい

「なに部?」

陸上、部

「そうなんだ。足、速そうだもんね」


ボクは迷惑そうな顔をしながらも、内心は嬉しくてワクワクしていた。


そのうち、バスがやって来た。
ボクの後にあの人が続いた。

ボクの気持ちを知ってか知らずか、あの人は何のためらいもなくボクの隣に腰掛けた。

そして、ボクの名前はおろか趣味や嗜好物まで聞き出していた。



バスは学校の前に止まった。

「それじゃね」

あのぉ・・
「部活、がんばるんだよ」


それなのに、ボクはあの人の名前さえ聞き出せないままだった。




やがて、時間の経過とともに三ヶ月が経ち、その出会いはボクの切ない思い出に変わった。

 
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