【完】素直になれよ。




私の唇を奪った張本人は、なぜか目の前で息を切らしていた。



なんだ…慣れてないんじゃん…。


「ごめん。泣いてるとこ…見てらんなくて」


「……帰る。」


私はとくに彼を睨みつけるわけでもなく、

そのまま何食わぬ顔でその場を離れた。




もう……最悪だ…。



廊下を歩いている途中で、私は顔を手で覆った。



李奈とはいつから?

私のそばにいるって…いったじゃん……。



「アホ……っ。」



足を止めて鼻をすする。


好きだなんて気づかなければよかったのかな。


…でもきっと、気づかないふりをしたって、気持ちに嘘なんてつけないんだ。



だってほら。


あいつの表情全部思い浮かべただけで、目の辺りが熱くなる。



織川、私…独占欲強いみたい。


ファーストキスだって、あんたがよかった。



涙を止める術を知らない私は、

ただただその場で泣きじゃくるだけ。





……好きなんだよ、織川。





< 258 / 399 >

この作品をシェア

pagetop