【完】素直になれよ。
私の唇を奪った張本人は、なぜか目の前で息を切らしていた。
なんだ…慣れてないんじゃん…。
「ごめん。泣いてるとこ…見てらんなくて」
「……帰る。」
私はとくに彼を睨みつけるわけでもなく、
そのまま何食わぬ顔でその場を離れた。
もう……最悪だ…。
廊下を歩いている途中で、私は顔を手で覆った。
李奈とはいつから?
私のそばにいるって…いったじゃん……。
「アホ……っ。」
足を止めて鼻をすする。
好きだなんて気づかなければよかったのかな。
…でもきっと、気づかないふりをしたって、気持ちに嘘なんてつけないんだ。
だってほら。
あいつの表情全部思い浮かべただけで、目の辺りが熱くなる。
織川、私…独占欲強いみたい。
ファーストキスだって、あんたがよかった。
涙を止める術を知らない私は、
ただただその場で泣きじゃくるだけ。
……好きなんだよ、織川。