【完】素直になれよ。
「なにが言いたいんだよ。大体、お前誰なんだよ。」
彼女を睨んでそう言う。
「私?私は三島李奈。隣のクラスなんだけど、知らない?」
三島、李奈…?
どっかで聞いた名前…。
俺は記憶の線路を必死でたどるものの、正解にはたどり着けずにいた。
「織川くんってさ、なんで今まで猫かぶってたの?」
その言葉に俺の背筋は凍りついた。
それにこいつの目…。
くりっとした大きな瞳。
なのにあいつ…、久留米の瞳とは全く違う。
なにがと言われればうまく答えられないが
雰囲気でいうとこいつの場合は…どこか不気味だ。
「ねぇ、織川くん?」
詰め寄られて、胸がザワッと音を立てる。
「なんでそんなこと…お前に言わなきゃならねーんだよ。」
動揺を隠すように強気の言葉を言い放って、負けじと女を睨みつける。
「私が気になるからに決まってるでしょ?」
また……。
目の前で口の端を嫌な角度で持ち上げて笑う。
気味が悪くて、俺は思わず視線をそらした。