【完】素直になれよ。
なんだこの女…。
視線を囚われると、胸がざわつく。
そんなことを思った直後だった。
ピーンポーンパーン_____…
呑気な放送の音が美術室の古いスピーカーから流れた。
『2年1組久留米さん。2年2組織川くん。保健室まで来てください。』
なんだよ、また桜井か…。
「んじゃあ…悪いけど俺、用事できたから。」
この気味の悪い女から離れるのには、都合のいい理由ができた。
そう思いながら俺は彼女の横を通り過ぎようとした。
そのとき
「…久留米衿華。」
ボソッと横から女の低い声が耳に入った。
久留米…って言ったよな、今。
俺は反射的に立ち止まっていた。