【完】素直になれよ。
「結斗...くん......。」
女は胸から離れて、上目づかいで俺の目を見つめた。
......なんでいきなり名前呼びに...。
ガタンッ。
そう思ったときだった。
「......?」
美術室の薄汚れた扉が音を立てたのは。
そのあとでタッタッタッ...と廊下を走る音が耳に入った。
...誰かいたのか......?
俺は女をゆっくり引き離して、扉の方に足を進めた。
「......どうしたの?」
後ろから女が俺に問いかける。
「いま...誰かいたような......」
「...気のせいじゃないの?」
「――――――...。」
俺はそのまま、女を一人残して美術室を出た。