【完】素直になれよ。
廊下に出ると、独特な木材や絵の具の匂いが消える。
......やっぱ、気のせいか?
廊下を見渡すが、とくに誰が居る気配もない。
「来ないでっ...!」
......!
遠くから微かに聞こえたその声を、俺の耳は敏感にとらえた。
また身体が勝手に動く。
「久留米......っ」
さっきのは間違いなく、あいつの声。
つまりさっき扉の音を立てたのは......。
無我夢中で廊下を走る。
「...ハァッ......。」
曲がり角で立ち止まり、息を整える。
そしてゆっくり、そこを曲がった。
「......なにしてんだよ...。」