【完】素直になれよ。






パチンッ――――!



殺風景なこの空間に響く音。



私は織川の頬を思いきり手で引っ叩いていた。




「...にすんだよ。」



叩いた場所が段々赤みを帯びていくのを見て、私はやっと自分がしたことに気がついた。




「ごめ...今のは......」


「俺わかんねーよ。」



俯いて謝る私の言葉を遮って、織川は言った。



わかんないって...?なにが...?


わかんないのは私の方だよ。



私が居るって知ってて、李奈を抱きしめたんでしょ...?





また。期待してたんだ私。



私が見ていたことに織川が驚いて、それで...『あれは違う。理由があんだよ。』...そう言ってくれるのを。





< 297 / 399 >

この作品をシェア

pagetop