【完】素直になれよ。
『まもなく到着いたします』
俺は久留米の代わりに
《とまります》と書かれたボタンを押した。
「ほら、着くぞ。」
「……わかってる」
大人しく「うん」とか頷けば
生意気も少しくらいマシになんのにな?
プシュー。
扉が開く音がするのと同時に久留米は席を立った。
「…じゃ。」
「ん。」
こちらを見ようともしない久留米に
少し呆れながらも小さい返事を返した。
次のバス停で降りて、最寄り駅の電車に乗って帰るか…。
なんてことを考えていた矢先。
「織川。」
「……?」
久留米がこちらを向いて俺の名前を呼んだ。
早くいかねーとドア閉まんぞ?
「今日は助かったありがとうさようなら。」
…は?
それはほんの一瞬の出来事で
夢か現実かもあやふやなくらい突然だった。