【完】素直になれよ。
やっぱり紗希といると安心できるし、楽しい。
毎日紗希と同じ学校で過ごせたら
いまとどれくらい、違うんだろ。
クレッシェンドに着いて
真っ先にポンチョのコーナーに走って行く無邪気な紗希を見て
こっそりそんなことを考えていた。
「やっぱ可愛いなー...このワンピ...」
お店の一番目立つ所に
マネキンに着せてあるワンピースを
ひらひらと触ってみる。
ベースカラーは黒とグレーがあって
白とピンクのペイズリー柄がほどこされている、薄手のワンピース。
袖が少し広がっているところも、素材も私の好み。
これは即買うでしょ。
ハンガーにぶら下がっているMサイズの黒のワンピを
迷いなくスッと手にとった。
そのときだった。
「早くしねーとおいてくぞ。」
なんだかイラッとするその声の方向に、私は振り返った。