蜜柑の翼
「あ、そういえば郁ちゃんのこと探している子がいたわよ?」

 アイスコーヒーを郁の前に置くとミカは何でもないようにポロリとそう言う。

「え?私?」

 郁の背中が緊張で少し強張る。
 
 雅史にこの場所がバレタのだろうか……。

 そんな不安が彼女の脳裏をよぎる。

「ほら、今ね外で手伝ってもらっているの」

 そう言ってミカが顎で指した窓の外には確かに見知らぬ少年の背中が見えた。

 口うるさい幼馴染の背中でないと分かるとホッと胸を撫で下ろすものの今度は新たな不安がむくりと首をもたげる。

「手伝ってもらっている……というか昼飯代分ってお前が働かせたんだろ」

「だって!無銭飲食を許してあげるほどうちは裕福じゃないのよ!」

 Tシャツにジーパン。

 本当にどこにでも居そうな背中だ。

  
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