≫ロックフェス
仲間
初めての軽音部の部室。緊張が止まらない。
莉夢はおそるおそる部室のドアに手をかける。
一度深呼吸をしてからドアを開けた。
「あら、あなたが新しい部員の桃井 莉夢ちゃんね。」
いきなり声をかけられ、莉夢は驚いた。
声の方を見ると眼鏡をかけた、綺麗な黒髪の人がいた。
「初めまして。私は星野 来夢。2年生。キーボードをやっているわ。」
自己紹介をされ、慌てて莉夢も自己紹介をする。
続いて、やんちゃそうな男子生徒が自己紹介をした。
「うっす。俺は岡部 達也だ。2年でドラムをやってるぜ。よろしくな。」
莉夢もよろしくお願いしますと返した。
次はいかにも軽音部といった感じのする、校則スレスレの女子生徒だった。
「こんにちは。あたしは笹川 綾。来夢や達也と同じ2年。ベース担当だよ。」
話しやすそうな先輩だなと莉夢は思った。
「じゃあ、あらためて…俺は鬼沢 優魔だ。ま、知ってるよな。そうそう、俺はボーカルだ  よ。」
いきなり隣にいた鬼沢君が声を発したため、莉夢は驚いてしまった。
莉夢は緊張してしまい、声が出ない。戸惑っていると、来夢が
「そんなに緊張することないわ。あ、そうそう、軽音部では皆下の名前で呼ぶのが基本よ。
 私のことも、来夢って呼んでね。ね、莉夢。」
女子はともかく、男子を下の名前で呼ぶのが苦手な莉夢は、驚いた。
だが、ここで関係を崩したくないという思いから
「1年生の桃井 莉夢です。よろしくお願いします。来夢先輩、達也先輩、綾先輩、優魔く… ん…。」
かなりたどたどしい口調になってしまった莉夢だったが、部員の印象は良かったようだ。
来夢に部活の説明書のようなものを渡され、家に帰ったらじっくり読んでくれといわれた。
「あ、そうそう、莉夢ちゃんの楽器の担当を決めないとね。
 莉夢ちゃん、何か得意な楽器とかある?」
キツい質問だが嘘をつく訳にもいかない。
「無い…です。ごめんなさい…。」
つい謝ってしまった。
「あら、謝ることないのよ。此方こそごめんね。じゃあ、ボーカルなんてどうかしら?
 ちょっと歌ってみてよ。」
断れない…だけど恥ずかしい…そんな気持ちを理解したのか、綾が
「恥ずかしいなら、あたしと來夢だけで聞くよ。女子同士ならいいでしょ?」
気の利く先輩である。
「えと…お願いします。」
達也と優魔がブーブー言っていたが、男子には廊下に出てもらうことにした。
「じゃあ、莉夢が好きな歌、歌ってみて。」
好きな歌はたくさんある。莉夢は1人のとき、よく歌を聴いていたから。
「それでは…N.UさんのHAPPYDAYを歌います。」
N.Uは莉夢が大好きな歌手だ。さらにHAPPYDAYは特に好きな曲。
LaLaLa~…
歌い終わると、来夢と綾が口を開けている。
「ど、どうしたんですか?!ゴメンナサイ。私の歌が下手だったんですよね。」
慌てて謝ると来夢と綾が口をそろえて
「何言ってるの?超上手いよ!もう、高音ボーカルに決まり♬」
嬉しいのか、恥ずかしいのか…
男子2人は部室に戻ってくると、莉夢の歌はどうだったのかと、来夢達に聞いている。
そこで来夢と綾が莉夢をべた褒めするため、莉夢は照れくさかった。
でも、嬉しかった。
もともと、優魔は声が低いため、低音ボーカルだったため、莉夢との相性は良かった。
気分がいいまま、家に帰って、軽音部説明書を読むと、桜蘭学園の軽音部は毎年、ロックフェスを開催しているらしい。
しかも、そのロックフェスでは何かのコスプレをして出ると書いてある。
莉夢は赤面が止まらない。明日来夢先輩に訴えてやる!と思いながら、気持ちよく眠りについた。
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