【完】麗しの姫君
『姫ちゃんは、ママのお姫様よ』
『おひめさま?』
『そう、可愛い可愛いお姫様』
『うん!おひめさまー!』
優しい記憶は、いつまでも色あせることの無い、宝石のような輝きがある。
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「……ん、マ、マ?」
窓の外から輝く光に照らされて、真っ白なレースであしらわれたベッドで目を覚ます。
今朝見た夢は、とっても素敵なお伽話の本を読んだ時のように、きゅんと幸せになる夢だった。
だけど、
「……夢じゃなくて、本物のママに会いたいよ……」
そんなこと言ったって、叶うはず無いのはわかりきってる。
そう、大切なママは、私とパパの心の中で永遠に生きてる。
ママ、今日も大好きだよ。
…ぐー
「……お腹、すいた」
ムードも切なさのカケラも無い私の腹減ったメーター。
その私の腹減ったメーターを目覚めさせた犯人は、パパお手製の朝ご飯が完成した合図。
幸せの香り。
それからしばらくすると、トントンといつものように階段を上る足音が聞こえて来る。
そして、私の部屋を優しくノックする音が聞こえるの。
ほら、今日もまた聞こえるはず。