【完】麗しの姫君
…はぁ、本当なら今頃瀬菜と恵斗とお気楽にランチしてたはずだったのになぁ…。
なんでこんなに緊張しながらお弁当食べてるの、私。
「向井さんだっけ、俺、久御山満。よろしくねー」
「あ、はい、向井姫です。よろしくお願いします」
「藤堂和泉、…なぁ、姫って名前、本気?」
「……へ?本、気??」
高等部の王子様、貴方は一体何を言い出すの?
「だから、まじで姫って名前なの?」
え、そこで嘘をつく必要あります?
「和泉、からかうな。姫、気にしなくていいから」
からかってたの⁈
「いや、だって陸が女連れて来るなんて初めてだからさ」
女って、ストレートだな。
…でも、私以外に女子を連れて来たこと、ないんだ。
…そっか。
ふふ、そっかそっか。
なんかお腹空いた。
パパ、お弁当をありがとう。
姫は今日も美味しく頂きます。
「…姫のお弁当、めっちゃ凝ってるけど、姫が作ったの?」
「…あー、いえ、父が…」
本当は自分で入れなきゃなんだろうけど、甘えちゃうんだよね。
「え、それすごいな。毎日?」
「はい。仕事でどうしても無理な時以外は必ず」
それは、パパとママの約束だそう。
食べることって、本当に大切だから。
愛情を伝える手段でもあるよね。