【完】麗しの姫君
「で、どうなわけ?」
「…どうって…、ただの、先輩と後輩?だと思います」
うん。それ以外ない。
「……本当?なら、いいの。いるのよねー、陸くんにちょっと優しくされて勘違いしちゃう子。でも向井さんは賢い子みたいだから、安心した。勘違いされるの本当迷惑なんだよねー、陸くんもそう言って悩んでるから」
「…そうですか」
「うん、なんかごめんねー、呼び出しちゃって。陸くんにはちゃんとした婚約者、いるからさ、かき回されたくないと思うんだよね」
「…それはそうですね」
「…うん、ね。じゃあ、あたし行くね。向井さんまたねー!」
「はい」
嵐のようにいきなりやって来て、台風のように去って行った、ギャル。
またね、って、絶対ないわ。
「勘違い。迷惑。……婚約者」
やっぱり、思ってたとおり。
やっぱり、信じるだけ無駄。
期待なんて、しない方がいい。
恋なんて、落ちるものじゃない。
私はまだ、落ちてない。
まだ、大丈夫。
「よし、帰ろー」