【完】麗しの姫君


帰り支度をして、靴箱まで来てみれば


これでもか!ってくらいの土砂降りの雨。


「…わー、土砂降り……」


今日は迎え無いんだよね…


「はぁ、どうしよ」


傘も無いし。


「………」


黒い雲で覆われた空。


太陽が隠されて、泣いているんだ。


「………」


一歩、また一歩、土砂降りの雨の中へ進んで行く、私の足。


私は、恋になんて落ちてない。


泣くなんて、しない。


勘違いも、してない。


迷惑なんてかけてない。


だから、平気だもん。


「…っく、……ふぇ、」


土砂降りの雨が、降ってるの。


全部、全部、雨なの。


早く、帰ろう。


帰らなきゃ。


風邪引いちゃう。


パパにご飯作って待っててあげよう。


心配かけちゃったから、もう大丈夫って、謝らなきゃ。


だから、動け動け、私の足。



「なにしてんの…」


「…っ!!」


突然止まった雨。


聞こえた声。


心が、ドクンと波打った。

< 30 / 59 >

この作品をシェア

pagetop