【完】麗しの姫君


「傘もささずに、なにしてんの」


雨を止めた犯人は、少し怒った顔をして、こちらを真っ直ぐに見つめてる。


「香坂、先輩…」


どうして、ここにいるの。


私を見つけるの。


「あー、もう、びしょびしょ、まじで風邪引くぞ」


カバンからタオルを取り出して、私の頭を優しく拭いてくれる。


「………」


ねぇ、優しくしないで。


なんで、そんなことするの。


迷惑なんでしょう?


勘違いされるの、嫌なんでしょう?


婚約者がいるんでしょう?


私が婚約者なら、他の子にこんなことしてる貴方を見たくない。


…私は、婚約者に優しくしてる貴方を見たくない………。


「…触ら、ないで」


嫌だ、嫌い、嫌い。


「……姫?」


「もう、帰り、ますから」


だから、腕を掴む、その手を離して。


「帰るって、その恰好じゃ無理だろ。…迎えは?傘だって、」


「……いいの、…大丈夫だから!」


もう、ほって置いて…。


「ちょ、姫!」


「お願い、離してっ…」


「…姫ちゃん?」


「「!」」

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