【完】麗しの姫君
「…俺もさ、男の端くれだし、そんな扱い受けたの初めてでさ」
それはそうでしょう。
端くれだなんて、ご謙遜。
…モテモテのくせに。
「で、そこからその子のことがすごく気になって、気がつけば目で追って、探してる自分がいて」
どうしてかな、ドキドキが止まらない。
落ち着いていた鼓動が早くなる。
「笑えるよな、恋愛なんてどうでもいいって思ってたのに」
笑える?…いいじゃない。
「だけどその子は、俺になんて気付きもしてなかった」
なんで、早く気づかないの。
「だから、ティールームで目が合った時、チャンスだと思った。逃せない、絶対にって」
あの強い眼差しは、今でも忘れられないんだ。
「どうにか理由をつけて、気を引いて、近づこうとした」
……不器用すぎやしませんか。
「だけど、距離は中々縮まらなくて…俺は自分から動くことなんて初めてで、どうしていいかわからなかったから」
…私も、どうしていいか、どうしたいのかわからなかった。